結晶性高分子固体は、分子が規則正しく並んだ結晶部と不規則な状態の非晶部から構成されており、そのうちの結晶部の総量を全重量に対して百分率で表したものを「結晶化度」と言います。フィルム、シート、ボトルなどの高分子成形品の結晶化度は、結晶化条件すなわち成形条件によって大きく異なり、またガス透過度、衝撃強度などの材料強度、耐熱性、透明性などの諸物性と深い関係があると言われています。結晶化度の測定にあたっては、密度測定、結品部と非晶部のX線回折強度の比較、赤外線吸収の結晶バンドまたは非晶バンドの強度比較、広幅法核磁気共鳴吸収(NMR)の微分曲線、DSCによる融解熱測定など多くの方法が用いられています。これら各方法によって求められた「結晶化度」は、同じ高分子固体であっても測定法により若干異なってきます。ときには2倍近く異なることさえあります。これは、高分子結晶の本質を反映しているものと考えられています。すなわち、「結晶化度」は高分子固体を理想的な結晶と理想的な非晶質の2相に分けた2相モデルを基本概念としていますが、高分子は低分子とは異なり、結晶相と非晶相を完全に分離することが不可能であるためと考えられます。高分子鎖は共有結合で結ぼれているために分子の自由度が制約されており、高分子結晶は多くの乱れを含んだ結晶、すなわちパラクリスタル(準結晶)の状態にあるためと考えられます。実際、高分子結晶のX線回折ピークのピーク幅の解析や、エチレン・プロピレン・ランダムコポリマー結晶のX線解析から実証されているところです。この高分子結晶の乱れには種々のものがありますが、なかでもパラクリスタルに特有な乱れは、隣接する原子聞の距離の統計的分布は定まっているが、長距離秩序は失われているタイプの乱れと考えられます。以上、高分子結晶は多くの乱れを含んでおり、この乱れの生じ方は結晶化の条件によって異なっています。とは言え、便宜的に結晶性高分子固体を2相に分けて算出した「結晶化度」は実用性があり、物性を表す指標として一般に用いられるに至っています。
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