熱可塑性樹脂

熱可塑性樹脂は、結晶性のものと非晶性のものに分けられ、包装材料として用いられる主な結晶性高分子としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(pp)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などがあります。一方、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリスチレン(PS) 等が非晶性高分子となります。非晶性高分子固体では、分子は無秩序な状態で存在し、結晶性高分子固体では、結晶領域(分子が規則正しく並んでいる領域)と、非晶領域(不規則な状態で存在する領域)から成りたっています。高分子にも低分子化合物の場合と同様に単結晶が存在します。ポリエチレン(PE)のキシレンによる希薄溶液を高温度で長時間保つことで、ひし形の単結晶が得られます。10μm程度の大きさで、層厚は結晶化温度によって異なりますが、10nm前後が一般的です。また、PEの分子鎖の長さは、重合度400の場合、約100nmとなります。したがって、分子鎖は単結晶内で折りたたまれていることになります。結晶性高分子の溶融物を結晶化させると、球晶構造をとることが知られています。球晶の中心から10~20nm 程度の薄板( ラメラ) の積層したものが、半径方向に平行してプロペラのようにねじれながら発達した構造が見られます。また、PE球晶におけるラメラと分子鎖の配置をみてわかることは、ラメラの構造が、基本的に単結晶の構造と同様となることです。包装材料として用いられるフィルム、シート、ブローボトルなども、内部構造は基本的に球晶構造です。ただ、成膜やブロ一成形時の応力や温度勾配の条件により、ラメラの成長方向は中心核より放射状にならず、PEのインフレーションフィルムを例に上げると、ラメラが成膜方向と直角方向に並んだ構造となっています。PVCやPSなどの高分子非晶固体の構造に関する研究はわずかで、分子鎖が一定の形態を取っていないランダムコイル鎖の均一凝集体であると一般的に思われてきました。これは高分子鎖の凝集状態を希薄溶液論の延長上にとらえたFlory流の考え方に基づいています。しかし、高分子の溶融状態では、このようなランダムコイルではなく、すでに分子鎖の折りたたみを含むある程度の組織を形成しており、高分子非晶固体においても分子鎖は分子内で折りたたまれた構造をもっているとする考え方もあります。PETは結晶性高分子ですが、PETの溶融物を急冷すると非晶固体となります。PETの非品薄膜の電子顕微鏡観察から、10nm程度の大きさのnodule構造が見出されています。あるいは、PET非晶固体のnodule内の分子鎖の構造モデルも出されています。